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名古屋・栄で再開発が続々発表! 商業の中心地復権へ 栄の逆襲は始まるか

 10月に入り、名古屋・栄で大規模な再開発構想が相次いで発表されました。

 10月3日には、地下鉄久屋大通駅近くにある旧住友商事名古屋ビル跡地で、高さ96mの高層ビルを建設する計画が明らかになりました。

名古屋・栄再開発、高層ビル建設へ 旧住商ビル跡地

 NTTグループの不動産会社、NTT都市開発(東京)は、地下鉄久屋大通駅近くの名古屋市東区東桜1に所有する旧住友商事名古屋ビル跡地に、2022年前半の完工を目指して20階建ての高層ビルを建設する。土地を高度利用できる「都市再生特別地区」に栄地区で初めて指定される見通しで、先行する名駅地区に続き、栄での再開発を促す起爆剤の役割が期待される。

 同ビルは地上13階、地下2階で現在、解体が進む。同社は10年にこのビルを取得。隣接する商業ビル「ブロッサ」(地上3階、地下1階)、オフィスビル「アーバンネット名古屋ビル」(地上22階、地下3階)との一体的な再開発に向けて準備してきた。

 計画によると、新ビルは高さ96メートル、延べ約3万900平方メートル、敷地面積は約1900平方メートル。地下と1階に店舗、2階以上にオフィスが入り、地下街との連結通路を設ける。久屋大通公園や周辺との周遊性も重視する。

 同社は特別地区の指定を目指し、9月下旬に名古屋市に都市計画を提案した。指定されると、容積率が基準の770%から緩和され、三つのビルを含めたエリア全体の容積率は約1100%になる。市は都市計画審議会での審査を踏まえて19年春にも都市計画で指定するとみられる。着工は19年秋の見通し。

 名古屋中心部での特別地区の指定は、03年のミッドランドスクエア(06年完成)以降、名駅地区で6件ある。

 <都市再生特別地区> 都市再生特別措置法に基づき、用途制限を除外したり容積率を緩和したりして都市の機能高度化や居住環境の向上を図る。指定を受けるには、周辺環境への配慮や公共への貢献などの要件がある。

名古屋・栄再開発、高層ビル建設へ 旧住商ビル跡地:経済:中日新聞(CHUNICHI Web)

 

 また、栄地区の中心に位置しながら長年高度利用がなされてこなかった栄広場でも、名古屋市と大丸松坂屋グループによる共同での再開発に向けた調整が進められていることが明らかになりました。

「栄角地」に高層ビル 名古屋市と大丸松坂屋
 名古屋の繁華街、栄の中心部に未利用地などとして残る「栄角地」の再開発に、土地を所有する名古屋市と大丸松坂屋グループが共同で着手し、高層ビル建設を構想していることが分かった。道路を挟んだ西側で建設中の日本生命栄町ビルでは、大丸松坂屋百貨店が商業施設を運営予定で、一体整備を目指す。都心に残る「最後の一等地」の再開発は、近年、名駅地区に後れを取っていた栄の活性化のシンボルとしての役割を担うことが期待される。

 中区錦三丁目の栄交差点北東の栄角地は、名古屋市が旧日銀跡地の千八百平方メートルを所有。大丸松坂屋が隣接地に、三井住友銀行が入居する建物の敷地二千平方メートルと、その北東側千平方メートルの駐車場を所有する。市有地部分は「栄広場」として休息や集会用スペースに開放されている。

 構想では、計四千八百平方メートルを一つの敷地として開発。商業施設やホテルなどが入居する高層ビルを想定し、日生栄町ビルと地下通路で結んで一体利用できるようにする。

 市は今後、栄角地の市有地部分を売却または賃貸し、大丸松坂屋グループとの共同事業を前提に開発する民間事業者を早ければ来年度にも公募する方針。市有地ではなくなった後も事業構想に市の意見を反映できるような公募の仕組みを検討している。

 栄角地は、明治時代に建設された日銀名古屋支店が名古屋空襲で焼失して以降、開発の検討と白紙化を繰り返してきた。市は二〇一三年度に策定した「栄地区グランドビジョン」で、「特色ある交流拠点とするため魅力ある機能導入をすすめる」と明記。大丸松坂屋百貨店の親会社J・フロントリテイリングと、共同開発の可能性を探っていた。

 栄地区では、市が本年度から久屋大通公園北側エリアの整備事業に着手し、久屋大通沿いの旧住友商事名古屋ビル跡地でも高層ビルの建設計画が進行。中日ビルも来年三月に閉館して新ビルが建設されるなど、大型事業が続いている。栄角地の再開発によってさらなる相乗効果が予想される。

「栄角地」に高層ビル 名古屋市と大丸松坂屋:一面:中日新聞(CHUNICHI Web)

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再開発の計画が明らかになった栄広場(中日新聞より引用)

 どちらも栄の一等地であり、名駅に比べて遅れてきた栄の再開発の起爆剤となることが期待されます。

 このほかにも栄では、中日ビルの建て替えが2020年代半ばまでに、丸栄跡地とその周辺でもリニア中央新幹線が開業する2027年を目標とした再開発などが複数計画されています。名古屋駅周辺で相次ぐ大規模再開発によって名古屋の商業地は名駅一強となりつつありましたが、ここにきて栄でも大きな再開発に向けた動きが活発化し、巻き返しが本格化していくことでしょう。

 

 さて、下の地図は、筆者が把握している栄・伏見地区での再開発計画を地図に落とし込んだものです。

  地図にしてみると、現在、名古屋市が進めている久屋大通公園の再整備事業の規模が非常に大きいことがよくわかります。

 現状、栄周辺の再開発の動きは広小路通を中心に東西方向に活発となっていますが、NTT都市開発による旧住友商事ビル跡地の再開発計画のように、久屋大通公園を軸とした南北方向にも再開発事業が波及していくようになれば、栄の面的な広がりはより魅力を増していくことでしょう。

 栄には、時代の移り変わりとともに古くなり、更新が必要となるビルが多くあります。1973年に開業したメルサ栄本店は、リニア中央新幹線が開業する2027年には築54年を迎えます。大津通を挟んでメルサ栄本店と向かい合う名古屋三越栄店はさらに古く、現在の建物の形になったのは1956年とのことで、すでに建替えなどが検討されてもおかしくない築年数となっています。

 また、一等地にありながら高度利用がなされず、駐車場や低層の商業店舗が混在する街区もまだまだ目立ちます。そのような街区においても、今後は積極的な土地の高度利用を図っていくことが求められます。

 名古屋市では現在、「栄地区グランドビジョン」の策定を受け、オアシス21からほど近い場所にあった教育館の移転を進めています。教育館周辺の街区は久屋大通や錦通に面していながら、駐車場や低層の商業店舗が混在し、高度利用が図られないままとなってきました。教育館がある街区のすぐ南側には、錦通を挟んで栄広場が位置しています。教育館とその周辺を再開発することにより、栄中心部に生まれる賑わいをより北側のエリアへと広げることができるでしょう。

 一方、駐車場が目立つということは、駐車場の需要が高いということの表れでもあると考えられます。名古屋は東京や大阪に比べて自動車で都心へ乗り入れる人が多いと言われ、休日の栄は駐車場に入る車列が渋滞している場面も見られます。

 栄は郊外から直接乗り入れるJRや名鉄の路線がないため、近郊からのアクセスでは自動車に軍配が上がってしまうのでしょう。公共交通機関による栄へのアクセスを向上することで自動車の流入を抑制し、駐車場となっている未利用地の再開発を促していく必要があると感じます。

 現在、名古屋市の都心においてはBRT(バス高速輸送システム)の導入に向けた検討が進められていますが、栄の再開発の動きを公共交通の面から後押しするためにも、早急な事業の具体化が待たれるところです。

 

 JRセントラルタワーズやミッドランドスクエアの開業を皮切りに、名古屋市でも名古屋駅を中心に超高層ビルの建設が相次ぎました。その結果、今や名古屋市内の百貨店で最も高い売上高を誇るのは名駅地区のJR名古屋高島屋となり、商業地の中心地は栄から名駅へと移り変わりつつあります。

 3M(松坂屋、名古屋三越丸栄の総称)と呼ばれ親しまれてきた栄の老舗百貨店も、丸栄が2018年6月末をもって閉店し、栄の関係者や市当局にも徐々に危機感が芽生えてきたのでしょう。

 都市は、放っておけば便利で新しい方へ中心が移るものです。名古屋駅はJR名古屋駅を筆頭として東海地方各方面からのターミナル駅として機能しており、その高い利便性を武器に発展を続けてきました。そしてこれからも、リニア中央新幹線の開業に向けて、ホテル、オフィス、商業施設の集積が進むとみられます。

 今のままでは栄に勝機はありません。街の魅力を高め、より多くの人を惹き付けるためには、名駅の利便性に勝る魅力を身に着ける必要があります。そのためにも、今後は老朽化したビルや未利用地などの再開発を積極的に進め、新しい店舗やサービスの拠点を呼び込んでいくことが重要です。

 古くからの商業地である栄は、再開発可能な区画が名駅に比べて小さく、複雑に入り組んだ地権者同士のしがらみなどもあって思うように事業が進まないことも多いでしょう。しかし、都市や社会の変化はそんなことを理由に待っていてはくれません。

 栄がこれからも名古屋の中心地であり続けるためにも、栄の魅力をより一層高めるさまざまな再開発事業が持ち上がることを強く期待しています。