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まちづくりについて考える

名鉄バス春日井市内線をグレードアップ 中量軌道輸送システムの導入で効率的な交通体系を構築せよ

 JR春日井駅名鉄小牧駅とを結ぶ名鉄バスの路線バス「春日井市内線」は、春日井市小牧市間を連絡するこの地域における幹線バス路線の一つです。

 平日の朝夕は通勤・通学客で車内が込み合う時間もあり、運行本数も終日を通して毎時3~4本程度が確保されています。

 小牧市が平成30年3月に策定した小牧市地域公共交通網形成計画によれば、春日井市内線の平成28年度の年間利用者数は60万人を超えており、ここ数年は微増ながら増加傾向が続いています。

 春日井市内線の沿線には大きな企業も多く、人口も集中していることから、今後も利用者数は増加していくものと筆者は予想しています。

 しかし、同路線が走行する道路は朝夕の交通渋滞が激しく、渋滞により速達性が損なわれているだけでなく、通勤・通学の時間帯は慢性的な遅延も発生しています。特に、雨天時は小牧市春日井市全域で交通渋滞が悪化することもあり、JR春日井駅では定刻になっても発車するバスが到着しないといった場面も見受けられます。

 路線バスの速達性や定時性を確保するための手段にはバス専用レーンの整備などが挙げられますが、同路線が運行する道路は専用レーンを整備できるほどの幅員がなく、道路を拡幅しなければレーン整備が難しい区間が目立ちます。しかしその場合、すでに区画整理が完了した地域で大規模な用地買収が必要となり、それはほとんど不可能なことであると思います。

 また、近年は全国的にバス運転士が不足しており、これは名鉄バスにおいても同じであろうと思われます。運転士が不足すれば、利用者数が増えていても簡単に増便することはできず、バス車内の混雑はじわじわと悪化していくことになるでしょう。

 

 当ブログでは、このような問題を抱える春日井市内線について、いっそのことバスによる路面交通から転換するという提言を行いたいと思います。

 それは、春日井市内線に相当する区間において、中量軌道輸送システム(新交通システム)による新しい路線を開業させようというものです。

 

春日井駅小牧駅間における中量軌道輸送システム路線計画の概要

1 路線と駅

 

 中量軌道輸送システムは、日本国内では一般的に「新交通システム」と呼ばれ、東京都のゆりかもめなどが有名です。この地方にも、2006年までは名鉄小牧駅桃花台ニュータウンを結ぶ桃花台線(愛称:ピーチライナー)が運行されていました。

 国内における中量軌道輸送システムの多くは、高架上の専用軌道をゴムタイヤで走行する「自動案内軌条式旅客輸送システム(AGT)」という規格が採用されています。なお、中量軌道輸送システムの定義は曖昧で、国内では磁気浮上式リニアモーターカー東部丘陵線リニモ)やミニ地下鉄と呼ばれる鉄輪式リニアモーターカー都営大江戸線など)などもこの部類に含まれています。

 春日井駅小牧駅間における新路線では、中量軌道輸送システムの代表格であるAGTを採用するものとします。

 中量軌道輸送システムによる路線は、多くの場合、高架上に専用軌道を設けますが、春日井市内線が運行されている道路は幅員が狭いため高架は建設せず、全区間を地下式とします。

 駅は起点と終点を除いて上記地図のとおり7駅とし、速達性向上のため春日井市内線のバス停よりも設置間隔を広げます。駅施設と地上との出入口にはエレベーターやエスカレーターの設置が必要になりますが、道路上にすべての用地を確保することが難しいという点が一つの課題であると思います。

 車両基地は牛山公園付近に設けるものとします。

2 運行ダイヤ

 春日井市内線におけるJR春日井駅から名鉄小牧駅までの所要時間は、ラッシュ時でおよそ45分、通常時で30分程度ですが、新路線では信号や渋滞を回避できるため、全時間帯で20分から25分程度の所要時間を目標とします。

 運行本数は、春日井市内線で平日でおおむね毎時3~4本、休日はおおむね毎時2~3本程度の運行本数が確保されていることから、新路線においても同等程度の本数を確保するものとします。ただし、さらなる利便性向上と利用促進のため、朝夕を中心とした増発、運行時間の延長、パターンダイヤによる分かりやすいダイヤ設定に努めるものとします。

 また、路線バスとは異なり遅延がほとんどなくなるため、JR中央線名鉄小牧線との乗り継ぎを意識したダイヤを設定することも有意義であると思います。

3 運行車両

 中量軌道輸送システムは、バスでは輸送力が不足し、鉄道や地下鉄では逆に過剰となる場合に検討される交通システムと理解されています。中量軌道輸送システムの輸送力に定義があるわけではありませんが、国内では、1時間に1方向あたり3,000人から10,000人程度の輸送力を前提として導入されることが多いようです。

 春日井市内線の利用者数が年間60万人程度であるということから推察するに、この区間では中量軌道輸送システムが必要になるほどの需要はないというのが実際だと思います。その点については次項で述べるとして、新路線ではバスと同等程度の輸送力を有するという前提の下、次のような運行車両を検討するものとします。

 新路線における車両は1編成は3両とし、150人程度の乗車定員を想定します。ちなみに、AGTにより運行される他路線の車両を見ると、旧桃花台線100系)は4両編成で定員193人、ゆりかもめ(7300系)は6両編成で定員306人となっており、おおむね1両あたりの乗車定員は50人ほどとなっています。

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AGT車両の例:埼玉新都市交通2020系電車(ニューシャトル

4 無人運行システムの導入

 新路線では、自動列車運転装置(ATO)による自動運転を行います。

 今後、バス業界では人口減少や他業種との人材獲得競争により、深刻な人手不足に陥ることが見込まれています。反対に、バスの需要は高齢者をはじめとした交通弱者の増加により増していくものと思われます。

 バスは、運転士がいなければ増発することができません。バス交通の増強を求める声が高まっても、それに応えられるだけの運転士が確保されない限り、バス交通は縮小せざるを得ません。

 一方、AGTは自動運転による無人運行が可能な規格です。東京都のゆりかもめ大阪市南港ポートタウン線では乗務員を必要としない本格的な無人運行が行われており、列車の運行に関わる人手が最小限に抑えられます。

 この提言の核心部分は、春日井市内線を新路線に置き換えることで生じたバス運転士の余剰を、この地域の他の路線バスに振り向けることで、小牧市及び春日井市一帯の公共交通を効率化し、そして強化することにあります。

 比較的本数が多く、一日を通して多くの本数を確保する必要がある春日井市内線を自動運転によって運行可能な新路線に置き換えることで、この地域におけるバス交通の効率化を図り、今後需要が増すと予想される地域に密着したコミュニティ路線に対して人的資源を投入できるようにすることが、この半ば無謀とも言える中量軌道輸送システム導入の核心部分なのであります。

5 利用の促進

  新路線への置き換えにより定時性と速達性が向上するため、春日井市内線と比べた新路線の利用者数は大きく増加するものと予想されます。しかし、小牧市春日井市は日常生活に自家用車が欠かせないクルマ社会の街となっており、新路線の経営を安定させるためには大規模な利用促進策に取り組んでいくことが必要となります。

 小牧市春日井市は市内に企業や工場が点在していることから、通勤先が小牧、春日井両市内で完結する人も多いようです。また、JR中央線名鉄小牧線で市外から小牧市春日井市へ通勤してくる人も一定数存在しているため、これらの通勤客をターゲットとした新路線の利用促進策を展開していくものとします。

事業所が運行する貸切バスの乗り入れ

 春日井市小牧市では、従業員の足として事業所と駅を結ぶ貸切バスを運行している企業が多く見受けられます。これらのバスの多くはJR春日井駅名鉄小牧駅を発着しているようですが、こういった貸切バスに、事業所に近い新路線の駅へ乗り入れてもらうことで通勤利用を促進します。

フィーダーバスの運行

 新路線の駅を中心に、通勤の足として利用できるフィーダーバスを運行します。フィーダーバスとは、幹線となる路線から支線として伸びる路線を指すもので、国内では富山ライトレールの沿線を運行する路線が有名です。

 通勤客を主たるターゲットとするため、運行時間は朝・夕を中心とし、運行ルートは既存のバス路線も再編しながら、次のようなルートとします。

 

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 以上が、春日井駅小牧駅間における中量軌道輸送システム路線計画の概要です。

 今後、名古屋市に近い春日井市小牧市でも、徐々に人口が減少し、高齢化率も高止まりとなることが予想されます。そのような時代において、多額の建設費を要する新交通システムはもはや一昔前の乗り物と言わざるを得ません。ご存じのとおり、2006年には、小牧市内を走る桃花台線新交通システムとして国内では初めて廃止となりました。

 一方で、人口減少と高齢化が進む昨今のわが国では、「交通弱者」という新しい社会問題が認識され始めています。健康上の理由などにより、やむを得ず自動車の運転から遠ざかった人が増えれば、そうした人たちの日常生活における移動手段を確保することが交通政策においても重要となります。

 しかし、少子化に伴う若年層の減少により、わが国ではあらゆる業種で人手不足が進んでいます。交通弱者に対する対応策として最も現実的な手段であるバスも、運転士は業界全体で慢性的な人手不足となっており、路線の拡充や運行本数の増便はおろか、現在運行している路線の維持すら難しくなっていくことが容易に想像できるところです。

 春日井市小牧市においてもそれは例外ではなく、今でこそ名鉄バスやあおい交通の尽力により他地域と比べて充実したバス路線網が維持されている両市でも、今後これ以上の増強は困難となり、むしろ徐々に減便や路線の廃止が進んでいくのではないかと予想しています。

 筆者は、このような時代にこそ、新交通システムの持つ可能性は大きいと考えています。

 鉄道駅などから離れた交通空白地帯をケアする基幹交通軸に新交通システムを導入することで、その部分をケアしていた既存のバス交通を他のコミュニティ路線に振り分けることができます。

 基幹交通軸の定時性・速達性を確保しながら、今後需要が増す地域密着型の交通サービスも強化していくことで、自家用車に頼りきりにならない、持続可能な都市のあり方を提案することができるものと考えています。