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citypeach

桃花台とその周辺の「まちづくり」について考える

名古屋の都心にはBRTが必要だ

まちづくり提案 名古屋市

久しぶりの更新となります。

本ブログは愛知県小牧市東部、桃花台ニュータウン近辺を中心としたまちづくりについて考察や提言を行うブログとしてこれまで更新を続けてきましたが、見出しの通り、今回の記事では少し遠出をして、名古屋市内のまちづくり、特に名古屋都心部の公共交通について記事を起こそうと思います。

 

 

さて、見出しの通り、今回の記事は名古屋都心部へのBRT導入を提言する内容となっています。

BRTとは、バス・ラピッド・トランジット(バス高速輸送システム)と訳されるバスを基本とした交通システムを指します。近年は、LRT(ライト・レール・トランジット)と並んで都市の新しい交通機関として注目が集まる機会も多くなってきました。

国内の大都市への導入については、すでに、新潟市が連節バスを用いたBRTシステムの構築に向けて事業を進めているほか、2020年にオリンピック・パラリンピック大会の開催を控える東京都でも、都心の湾岸部にBRTを導入する構想が持ち上がっています。

また、東日本大震災による津波の被害を受けたJR気仙沼線大船渡線では、一部区間にBRTを導入する形で仮復旧がなされるなど、近年では国内でも様々な形でBRTの導入例が見られるようになってきました。

 

▼国内でのBRT導入実例及び導入に向けた主な動き

新たな交通システム 新潟市

都心と臨海副都心とを結ぶBRTについて/東京都都市整備局

気仙沼線・大船渡線BRT(バス高速輸送システム):JR東日本

 

この一方で、名古屋市では現在、2027年の中央リニア新幹線開業に向け、都心部回遊性を高めるためLRTの導入について検討が進められています。

 

なごや交通まちづくりプラン | 移動手段の多様化

名古屋に路面電車が復活?燃料電池式路面電車・LRTの運行を市が検討 | 名古屋情報通

 

具体的な導入についての構想や計画が策定されているわけではありませんが、名古屋市住宅都市局が2014年に策定した「なごや交通まちづくりプラン」においては、LRT・BRT等の路面公共交通の導入という文言が盛り込まれており、リニア開業を見据え新たな公共交通機関の整備について市が前向きな姿勢を示していることが分かります。

これとは別に、2011年には名古屋市の外郭団体である名古屋都市センターが「名古屋都心ビジョン2030」と題した提言をまとめています。

この中では、新たにLRTを導入し、これを主軸に据えて都心に賑わいを創出していくことが提言されていることから、これが名古屋市内部で路面公共交通の導入について検討する際の叩き台となったのかもしれません。

 

名古屋都心ビジョン2030|名古屋都市センター

 

このように、現在の名古屋市では、BRTよりもむしろLRTの導入に前向きな姿勢が示されているわけですが、個人的には、名古屋都心部に導入すべきなのはLRTではなく、BRTの方が適切なのではないかと考えています。

では、ここからは、この記事の核心部分となる、名古屋の都心にBRTを導入すべきであると考える理由と、BRTを導入するならばどのように導入すべきかという点について、考えを述べていこうと思います。

 

まず、なぜ名古屋の都心にはLRTではなく、BRTを導入すべきであると考えるのか。

その理由としては、

 

  • 整備時のコスト面においてLRTよりも優位である
  • 名古屋都心部は幅員の広い道路が多く、BRTに必要な専用レーンの確保が容易である
  • 栄付近まで乗り入れている基幹2号系統(新出来町線)との互換性がある

 

といった点が挙げられます。

LRTとは、いわば路面電車の進化版です。軌道を敷設し、架線を張らなければ車両を走らせることができません。

これに対し、BRTでは道路の中央に専用レーンを整備することでBRTとしての設備を整えることができるので、整備時のコストという点ではBRTが優位に立つと考えられます。

とりわけ、名古屋都心部はもともと幅員の広い道路が多いためBRT専用レーンの用地確保が容易でしょうし、名古屋市ではすでに基幹2号系統(新出来町線)において中央走行方式のバスレーンが採用されていることから、新たにBRT専用レーンを整備することへの市民の理解も得やすいのではないかと思われます。

もちろん、LRTにしてもBRTにしても、道路の中央に用地を確保する必要があることから、走行帯の整理や交差点付近の改良、停留所の整備、信号機の整備などのコストが発生することは避けられません。

また、整備時のコスト以外にも、運行に伴うランニングコスト、運転士の確保のしやすさなどの点を比較することも欠かせません。ただし、個人的にはこれらの点を考慮してもなお、BRTはLRTよりも優位に立っているのではないかと考えています。

 

コストと並んでBRTの優位性が発揮されているのが、既存の交通網との連動のしやすさ、特に、名古屋市独特のバス交通システムである「基幹バス」との連携のしやすさでしょう。

ご存じの方も多いでしょうが、名古屋市内には基幹バスと呼ばれる珍しいバス交通システムが構築されています。

 

基幹バス (名古屋市) - Wikipedia

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名古屋市における基幹バス交通の高度化等検討調査 報告書(中部運輸局)より

 

基幹バスの最大の特徴は、専用走行レーンによって一般の道路交通からバスの走行を切り離そうとするところにあります。

そして基幹2号系統(新出来町線)においては日本でも珍しい中央走行方式のバスレーンを採用しており、この路線は日本におけるBRTの先駆け的な存在としても知られています。

 

BRTはバスを基盤とした路面公共交通であるため、名古屋市の基幹バスとの相性は抜群に良いと思われます。

特に、栄付近まで中央走行方式のバスレーンが伸びる基幹2号系統(新出来町線)は、BRTとインフラを共有することや、BRTシステムに組み込んでの一体的な運用を行うことも可能であると思われます。

導入の仕方次第では、基幹バスとBRTを組み合わせたより高度なバス交通システムを構築できる可能性を持っていますし、このような点でも、BRTはLRTよりも優位に立つものであると考えています。

 

以上が、名古屋都心部にBRTを導入すべきであると考える理由になります。

では、実際に名古屋都心部にBRTを導入するならば、どのようなルートやどのような仕組みで導入するのが最も望ましいのでしょうか。ここからは、具体的な導入の構想や手法について述べていきたいと思います。

 

都心の要所を的確に結ぶ運行ルートの設定

 まず、運行ルートについては、以下の地図に示すような路線を設定することが望ましいと考えます。

 

 

運行ルートは、環状線・広小路線・新出来町線の3ルートとし、環状線、広小路線については新設、新出来町線は基幹バスとしての現在の運行形態をそのままに、BRT路線として一体的に運用することとします。

名古屋都市センターがまとめた「名古屋都心ビジョン2030」では、LRT若宮大通に通す運行ルートが示されていました。しかし本案では、矢場町交差点から若宮大通には侵入せず、そのまま南下して大津通大須通・伏見通を走行し、広小路通を経由して名古屋駅に向かう環状ルートを想定します。

大津通を南下することで、観光スポットである大須を訪れる観光客の利便性を向上させることができますし、広小路通を経由することで、再開発や催し物などで注目が集まる納屋橋地区へのアクセスを向上させることができると考えられるためです。

また、広小路通を活用して名古屋駅ー千種駅間にBRT路線を整備することで、並走する地下鉄東山線の混雑を緩和するとともに、広小路通を中心とした栄地区一帯の回遊性を高めることもできます。買い物や娯楽を目的として広小路通を訪れる地元の旅客を取り込むことで、広小路通全体に行きわたるにぎわいの創出を目指します。

ちなみに、環状線と広小路線については、BRTの車両のみがBRT専用レーンを走行するものとし、並走している一般の路線バスの乗り入れ等は行わないものとします。

 

専用レーンと連節バスによる本格的なBRTの確立

新設する環状線・広小路線では、可能な限り道路中央にBRT専用レーンを設置し、一般の交通から完全にバスの走行を隔離することが望ましいと考えます。幅員の都合などでBRT専用レーンの導入が難しい区間については、新出来町線と同様の中央走行方式のバスレーンを採用し、バスの定時性・速達性を確保することとします。

また、輸送力を強化するため、環状線・広小路線で用いる車両は連節バスを中心とします。連節バスに燃料電池式の車両を採用すれば、BRT自体を観光資源とすることもできるかもしれません。

新出来町線においては、従来通り中央走行方式のバスレーンを用い、従来と同様に基幹バスを運行します。

ただし、BRT路線図や乗換案内においては他の路線と一体的に表記し、BRTを頼りに名古屋市内を観光する観光客らに徳川園や文化のみち、ナゴヤドームへのアクセスルートとして利用してもらえるよう、初めての人にも利用しやすい環境を整備していきます。この際には、BRT路線に駅ナンバリングや路線カラーの設定を行い、地下鉄と同等の交通機関として取り扱うことが望ましいかと思われます。

この他、停留所では電光掲示板による発着案内を行い、インターネットを通じたバスロケーションシステムを用いて運行情報の提供を行うことで、利用者の利便性向上を図ります。

 

料金形態

環状線・広小路線の料金は、市バスと同様に一律210円とします。新出来町線についても、現在の料金形態をそのまま引き継ぐものとします。

BRT路線全線を市交通局の各種一日乗車券の対象とするほか、新出来町線において実施されている共通乗車制度(乗継割引)を他のBRT路線においても実施することを検討します。

 

その他

広小路通や大津通の南側については、BRT導入を契機に将来的なトランジット・モール化を目指します。

広小路通や大津通の南側は、路面店が多く立ち並び、終日多くの人通りで賑わうことから、これらの通りを歩行者中心の空間とし、都心部により一層のにぎわいを創出していくことが望ましいと考えます。

 

トランジットモール - Wikipedia

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兵庫県姫路市トランジットモール

 

 

さて、以上が、名古屋都心部にBRTを導入しようという提言の中身になります。

 

 

名古屋都心部は東京や大阪に比べて比較的コンパクトなエリアに様々なスポットが収まっています。繁華街として賑わう名駅や伏見・栄、昭和レトロな風情が残る円頓寺や四間道、多くの観光客で賑わう名古屋城白川公園大須など、比較的それぞれのスポットがそれほど遠くない距離に位置しています。

そんなコンパクトな名古屋都心部における移動は、多くの場合が徒歩と地下鉄に依存しています。特に街に不慣れな観光客はその傾向が強まるのでしょう。

しかし、比較的コンパクトな都心において、地下鉄は少々オーバースペックな交通手段なようにも思います。階段の登り降りや構内の移動、行先によっては2~3区間の移動のために乗換が発生してしまうのが、名古屋都心部の地下鉄の不便なところだと個人的には感じます。

LRTやBRTといった路面公共交通の導入は、このような現状を一挙に解消し、なおかつこれまで地下鉄の駅から離れたところに位置していたスポットにも気軽に足を運んでもらうことができるという大きなメリットを生むことでしょう。市内に点在するスポットに満遍なく人を行き渡らせるという観点からも、路面公共交通導入が持つ意義は大きいと思われます。

ただし、流行りに乗ってただなんとなく路面公共交通を導入するのでは、その多大な効果が小さくなってしまいます。

名古屋という都市の特性や、既存の交通形態との連携などを考慮にいれると、個人的にはLRTよりもBRTの方が名古屋にはお似合いなのではないかと思い、今回このような記事を起こした次第です。

 

名古屋市は、年内にも燃料電池式の車両を用いた路面電車LRTについて実現可能性の可否を判断する方針のようですが、軌道系の交通機関に固執せず、ぜひBRT(バス高速輸送システム)の導入についても積極的に検討していただきたいと思います。