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桃花台とその周辺の「まちづくり」について考える

今後の新図書館計画のポイントと、新たな新図書館計画への提言

10月4日に行われた住民投票の結果、現在の新図書館建設計画に反対する票が多数となったことを受け、小牧市は20日、これまで検討していたCCC・TRC共同事業体による新図書館建設計画(いわゆる「TSUTAYA図書館」計画)を事実上白紙撤回する方針としました。

計画が白紙撤回されたことで、今後、新図書館建設計画を巡る議論の焦点は、「小牧市にはどのような図書館が必要なのか」という根本的な部分に戻ってくることになると思われます

そしてこのステップを迎える上で重要になるのが、市民一人ひとりが求める図書館像であると私は考えています。

ただ、「市民一人ひとりが求める図書館像」と一口で言っても、最低限のポイントを抑えなければ計画をまとめる上での収拾がつきません。

そこで、小牧市の新図書館建設計画には論点となるいくつかのポイントが存在していますので、この記事では、自分の中の図書館像を整理する際に重要となるであろうポイントについて紹介していこうと思います。また、これまで当ブログでは、新図書館計画に対する筆者個人の明確な立場を示してきませんでしたので、この記事で併せて示していきたいと思います。

 

まず、新図書館建設計画について考えるときに重要となるポイントは3つあると私は考えています。

もちろん、これはあくまでも筆者の個人的なポイントです。他にも重要だと考えるポイントがある人は、コメントでそれを示していただければ嬉しく思います。

 

 

まず1つめは図書館の建設場所

これについては、現行の計画が前提としているA街区への建設とラピオへの入居という2つの考え方が存在していると考えています。

 

1つめと関連して、新図書館の計画を新しく作るのか、過去に作られた既存の計画に沿って進めるのか、という点も重要なポイントとなります。

具体的には、平成21年に策定された「新小牧市立図書館建設基本計画」(以下、基本計画とする)に沿ったものとするのか、そうではないのかといったところが論点となるでしょう。

ちなみに、基本計画はA街区への建設を前提としたものであるため、仮にラピオへの移転を目指す場合、基本計画そのものの大幅な見直しが必要となってきます。

 

3つめは建設費の課題です。

今回の住民投票においては、42億円にものぼる巨額の建設費が一つの焦点となりました。図書館建設に関して小牧市には約20億円の積立金が存在しているとのことですが、それを全て使ったとしても22億円は市が一般会計や市債によって負担することになったわけです。

いくらなら妥当か、あるいはいくら以内での建設なら適切か、という点も、図書館像を膨らませていく中で重要なポイントとなるでしょう。

 

個人的には、小牧市に求める図書館像を考えるときにこの3つのポイントを抑えながら考えていけば、具体的な計画への賛否を示すための図書館像がイメージしやすくなるのではないかなと思います。

ただ単に「どんな図書館がいいのだろう」と考えてもそれはぼんやりとしてしまい、政策的な判断基準にはなりえません。現行の図書館計画が住民投票で否決に至った理由などを踏まえると、上に挙げた3つのポイントは、小牧市に見合う図書館像を自分の中で膨らませていく中で、“議論の分岐点”になるものだと思っています。

 

 

 

さて、ここからは筆者個人としての図書館像について紹介していきたいと思います。

上のポイントに沿いながら書いてありますので、記事を読んだ人が自分の図書館像をイメージする際の参考になれば幸いです。

 

 

まず私は、新図書館の建設場所はA街区が適当であると思っています。

A街区は名鉄小牧駅の正面に位置しており、自家用車だけでなく、鉄道やバスなどからでも便利に利用できます。現在は小牧駅西駐車場として利用されている土地のため、用地の確保が容易であるという点も、A街区への建設を支持する理由です。

ラピオへの移設については、現段階ではテナントが入居していることや、蔵書スペース(開架・閉架書架スペース)・閲覧・事務スペースの確保といった点で検討すべき課題が多いと感じるため、ラピオが図書館として相応しい構造かを検証していない時点では、一から図書館としての設計が可能なA街区への移転・建設を支持したいと考えています。

 

そして、自分の図書館像の基本的な部分はすべて、平成21年度に策定された基本計画に沿ったものとなっています。これは、この基本計画が、市民を交えて何度も行われた検討の中で形成されたという点を重視したものです。

ただし、この基本計画には再度、ある程度の修正を加える必要があるでしょう。というのも、基本計画の策定からすでに6年余りが経過しているため、小牧市や社会情勢の変化を確認し、見直すべき点があれば見直すといった過程がどうしても必要になるのだと思われます。

特に、先の住民投票により、図書館運営に民間事業者を取り入れるか否かという点については市民の間に一定の世論が形成されたのではないかと分析しています。

おそらく、平成21年当時の基本計画策定段階では先行事例が不足していたことなどもあり、この点についての議論が深まっていないと思われるので、改めて指定管理者制度PFI方式といった民間活力導入の是非について、基本計画の見直しを含め、市民を交えた評価・検討がなされることが必要になるだろうと感じるところです。

 

ちなみに、ここでの民間事業者を取り入れるか否かという論点は「TSUTAYA図書館」への是非を意味するものではなく、大枠で見た「指定管理者制度」や「PFI方式」の導入への是非を指すものです。

CCC参入によるここまでの騒動により、今の小牧市では新図書館建設への民間活力導入が批判的に捉えられかねない情勢になっていますが、個人的には運営費の削減やサービス向上といった面においては、依然として民間事業者のノウハウを活かす利点も大きいと評価しています。この点については今後、CCCによる「TSUTAYA図書館」から離れ、メリットとデメリットを分析・比較しながらの議論が深まってほしいところではあります。

 

ちなみに、小牧市における新図書館建設計画においては、平成20年~21年にかけて、基本計画を策定する段階で指定管理者制度PFI方式による新図書館の建設・運営がある程度は検討されてきましたが、当時は制度に対する認識の薄さや効果の検証が不十分であるとの理由で、従来通りの市直営方式による運営が決定した経緯があります。

また、図書館へのPFI導入事例としては、2002年に桑名市立中央図書館でPFI方式による図書館建設が行われています。

 

新しい形の図書館-PFI-(三重県桑名市立中央図書館):文部科学省

 

 

そして最後に重要なのが、建設費の問題です。

私はA街区への新図書館建設を支持していますので、費用もそれなりに多額になることを想定しています。素人の判断にはなりますが、新図書館の建設費用は、30億円程度に収まってくれればいいなというところです。

ちなみに、平成20年に整備された日進市の新図書館は約29億円(日進市立図書館:図書館年報 平成25年度のあらましより)、平成19年に建設された兵庫県伊丹市の新図書館は約27億円(詳細は下記サイトの引用内で紹介)で建設されたそう。ここから一般的な図書館建設費の相場を割り出すのはやや暴力的ですが、小牧市の積立金が約20億円であることや、建設される土地がすでに市が管理している市営駐車場ということなどを勘案すると、現在の建設コスト上昇を踏まえても容認できる建設費は30億円が上限なのではないかと思うところです。

抑制の具体的な方策としては、図書館としての最低限の使いやすさ・居心地の良さを確保しつつ、設計や内装においてはなるべく簡素な施設に仕上げるなどの方策が考えられます。また、先ほど挙げたPFI方式を採用すれば、建設段階から費用を圧縮する効果が期待されます。

ただ、建設費という問題は、額がいくらだからダメだとか、他の市の額と比べて高いからダメだということではありません。最も深刻なのは、建設費を市民に分かりやすく説明することが極めて難しいということです。

この、建設費の説明という点に関しては、以下のサイトでおもしろい指摘がありましたのでご紹介したいと思います。

 

CA1834 - 図書館整備「反対運動」とその争点 / 桑原芳哉 | カレントアウェアネス・ポータル

 

例として、兵庫県伊丹市の新図書館整備を取り上げる。

2007年に新図書館整備が計画された時点での設計費・工事費等の事業費は約27億円とされていた。また、新図書館開館年次である2012年度の図書館費当初予算額は約2億6,000万円とされている。単純な試算として、仮にこの費用で整備され、40年間運営されたとすると、40年間の総経費は131億円、1年間の経費としては3億2,750万円となる。

伊丹市の人口は約20万人であるので、単純な試算では図書館整備・運営に係る市民1人当たりの負担額は年間1,600円余り、月額にすれば約140円となる。

このような試算を提示することが、整備費に関する大きな批判に対して効果的な説明となる可能性を追求する必要があると考える。

 

また、整備費という「インプット」に対する「効果(アウトカム)」を示すことも追求する必要がある。

図書館整備を計画する自治体の説明資料や首長の会見での発言等を確認すると、「図書館は将来への投資」「住民の知的財産」といった抽象的な言葉により図書館の必要性を説明しているケースがあるが、このような説明が住民や議会に対して図書館への理解を高めることに結びついているとは考えにくい。

保育所の整備については、近年、子どもの声や送迎の車に関連して近隣住民の理解が得られない、という事例が多く見られる。

このような「迷惑施設」としての対応に加えて、保育所の整備にあたっては、一般に、1か所整備することにより待機児童が何人減少する、という具体的な数字により説明が行われており、その結果、保護者(主として母親)の就労機会が増大するという事業効果が推察され、その必要性についての理解を広めることにつなげている。

このような、施設整備の「効果」に関する「わかりやすい説明」を考える必要がある。

 

確かに、このように具体的な数字などを提示した説明がなされれば、たとえある程度の建設費が見込まれる状況であっても、市民の理解がスムーズに得られる可能性があります。

若干本題からは逸れますが、小牧市の新図書館計画が今回の住民投票に至った経緯には、このような行政側の説明力不足があったことは否めません。市の説明力の向上が、円満に新図書館を建設する鍵を握っているのではないかと個人的には考えています。

 

 

さて、以上3つのポイントに沿って個人的な図書館像を提示させていただきました。

この他に、上のポイントから外れる自分なりの図書館像を2点だけ付け加えて、記事を締めくくろうと思います。

 

先ほど図書館の建設場所をA街区としたのにはもう一つ理由があります。

これは、TSUTAYA図書館でも話題になった「街のにぎわい創出につながる」という側面を重視したものです。

ただし、私が思い描いている図書館像による「街のにぎわい創出」は、TSUTAYA図書館によるそれとは若干異なります。

TSUTAYA図書館の場合、図書館それ自体が人を集める装置として機能することが想定されました。一方、ここで私が考えているのは、たとえば、図書館の敷地に設けた公共空地をイベントスペースとして活用できるようにし、これを市民などに開放することで図書館の前で様々なイベントが実施できるようにする、といったようなものです。

私の思い描く図書館像では、図書館はあくまでも図書館です。

しかし、その立地が中心市街地の一等地という事情を考慮し、図書館に多くの人が集まる仕掛けを組み込むことで、中心市街地のにぎわい創出に活用することが良いのではないかと考えています。

 

また、TSUTAYA図書館では図書館内に併設されるカフェの必要性が大きく問われましたが、勉強目的などで長時間滞在する図書館利用者にとってみれば、飲食ができるスペースが近くにあることはありがたいことです。

ですので、カフェの設置についても検討事項として加え、たとえば、公共空地でのオープンカフェの実施や、街路に面した路面部分へのテナントとして図書館の閲覧スペースとは分離された形で入居させるなど、その方法についていくつか検討してほしいと思います。

 

以上がだいたい自分が小牧市に求めている新しい図書館像になります。

 

 

 

現在、新図書館建設計画は住民投票の結果を受けて一旦ストップしていますが、この先の計画進行についてのイニシアチブは市民が握るべきものです。

今後、市民を交えた検討や見直しが行われるときに備えて(行われるかはわかりませんが)、市民一人ひとりがどんな形であれ、新図書館建設計画に関心を持つことが大切になります。

住民投票で自らの一票を反対に投じた人は、なぜ新図書館建設計画に反対したのか、どのような図書館を求めているのかを、そして賛成に投じた人は、なぜ「TSUTAYA図書館」計画に賛成したのか、その理由をきちんと整理しておかなければなりません。

もし市民が今後も引き続き活発な行動や主張を行えば、新図書館は本当の意味で市民が誇れるものになると確信しています。