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まちづくりについて考える

もし桃花台線「ピーチライナー」を復活させるなら

2018年8月11日:記事の内容を修正しました。

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桃花台東駅の折り返し用ループ線を走行する桃花台線Wikipediaより引用)

 桃花台線ピーチライナー)は、2006年まで愛知県小牧市名鉄小牧駅桃花台東駅間の約7.4㎞を結んでいた案内軌条式旅客輸送システム(AGT)による路線でした。

 しかし、桃花台線は開業当初から深刻な利用者低迷に陥り、開業からわずか15年あまりで廃止となりました。

 廃止からおよそ12年が経過した2018年現在も、高架橋や駅舎等のインフラ構造物はその大部分が残されており、完全撤去への目途はいまだに立っていません。

 当ブログでは、このような不名誉な路線となってしまった桃花台線について、再度の復活を提言する内容で記事を起こしたいと思います。もちろん、当然のことながら桃花台線の復活などということは到底ありえない話であると重々承知していますので、記事は筆者の妄想だと思いながらお付き合いいただければ幸いです。

1 廃止までの経緯

 桃花台線の復活について述べる前に、まずは桃花台線が廃止に至った経緯について触れることとします。

 桃花台線が廃止に至った最も大きな要因は、利用者数が極度に低迷したという一点に尽きます。

 桃花台線は、当初、名鉄小牧駅から国鉄高蔵寺駅までを結ぶ路線として計画されました。計画では工期が2期に分けられ、1991年3月に第1期開業区間として小牧駅桃花台東駅間が開業しました。

 しかし、桃花台線が接続された名鉄小牧線名古屋市側の終点・上飯田駅は、当時、同線のみが乗り入れる単独の駅であり、名古屋市中心部へ出るためには1㎞ほど離れた地下鉄名城線平安通駅まで歩くか、市バスに乗り換える必要がありました。

 この状況は2003年の上飯田連絡線開業によって解消されましたが、名古屋市中心部へ向かう際の不便さにより、桃花台線の利用者数は開業当初から予測を大幅に下回ることとなりました。

 このほか、桃花台線開業時点における桃花台ニュータウンの人口が当初の目標を下回っていたこと、桃花台ニュータウンの入居開始時期と桃花台線の開業時期とがずれてしまい、桃花台線の開業までに自家用車が住民の生活の足として定着してしまったことも、利用者数が低迷した要因として挙げられると思います。

2 桃花台線の復活に必要な方策 

 利用者数の伸び悩みにより多額の負債を抱えることとなった桃花台線は、2006年9月末の最終営業日をもって廃止となりました。その時点における負債総額は、およそ46億円に上っていたとのことです。

 桃花台線の廃止はまさに起こるべくして起こったと言えるものですが、この節では、桃花台線の再度の復活について考えるとともに、桃花台ニュータウンの交通利便性を向上させ、多くの人に利用される桃花台線のあり方について記述していきます。

路線の延伸による利便性の向上

  前述のとおり、桃花台線の利用者数が低迷した最大の要因である名鉄小牧線上飯田駅の乗換事情は、2003年の上飯田連絡線開業により解消されました。しかし、現在も名鉄小牧線の利便性は、当初計画でもう一方の接続先とされた競合路線のJR中央線よりも劣っていると言わざるを得ません。

 特に、近年発展が著しい名駅地区への移動はJR中央線が格段に便利であり、運賃、所要時間、乗換回数のいずれにおいてもJR中央線が優れています。

 

名鉄小牧線を利用して名古屋駅へ向かう場合(小牧駅から出発)

 所要時間:約40分

 運賃:570円(6ヶ月通勤定期券:117,790円)

 乗換回数:2回(平安通駅久屋大通公園駅または栄駅)

 

JR中央線を利用して名古屋駅へ向かう場合(高蔵寺駅から出発)

 所要時間:約30分

 運賃:410円(6ヶ月通勤定期券:59,090円)

 乗換回数:0回

 

 また、桃花台線の廃止後、名鉄バスにより路線バス「桃花台・春日井線」が開設されたため、桃花台ニュータウンから名古屋市中心部へと向かう流動は多くがJR中央線春日井駅を経由するルートに移りました。

 なお、JR春日井駅から名古屋駅までの所要時間や運賃は、JR高蔵寺駅を利用する場合よりもさらに有利となります。

 

JR春日井駅から名古屋駅へ向かう場合

 所要時間:約20分

 運賃:320円(6ヶ月通勤定期券:46,660円)

 乗換回数:0回

 

 桃花台線を復活させるために区間を延伸するとなれば、現在の桃花台ニュータウンの公共交通網を考慮し、当初計画で接続先だったJR高蔵寺駅よりも、桃花台ニュータウンの最寄り駅として機能しているJR春日井駅への延伸が妥当であるように思われます。名鉄バス春日井・桃花台線がすでに名古屋市方面への主要なルートとして確立していることから、この区間をグレードアップすることで、桃花台ニュータウンの交通利便性は大幅に向上するでしょう。

 しかし、名鉄バス春日井・桃花台線を置き換える形で桃花台線を延伸した場合、桃花台東駅からJR春日井駅までの延伸区間は約8.3㎞と廃止区間よりも長くなるほか、桃花台ニュータウンから小牧駅までの残る区間については利用価値が全くない状態となってしまいます。

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桃花台東駅からJR春日井駅方面へ延伸する案

 このため、筆者が桃花台線の復活において提案する延伸先は、JR高蔵寺駅でもJR春日井駅でもなく、小牧駅から西方向へ新たに路線を伸ばした先の名鉄岩倉駅とします。

 名鉄岩倉駅名鉄犬山線の駅で、名鉄名古屋駅までの所要時間は列車の種別により異なるものの、各駅停車で約20分、急行や準急で約15分、最も早い特急で10分程度と、JR中央線と互角かそれ以上となっています。

 また、岩倉駅には名鉄犬山線内を走るすべての列車が停車し、発着する列車の本数は平日のおおむねすべての時間帯でJR中央線を上回っているほか、途中の上小田井駅から地下鉄鶴舞線へ直通する列車もあり、名古屋市中心部へのアクセスではJR中央線よりも利便性が高いと評価できるでしょう。

 運賃はJR中央線春日井駅名古屋駅間に比べるとやや割高な350円ですが、JR高蔵寺駅から乗車した場合は岩倉駅からの方が安くなります。

 さらに、名鉄小牧駅から名鉄岩倉駅までの延伸区間は約5.8㎞となり、JR春日井駅方面に比べて短くなります。

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小牧駅から名鉄岩倉駅方面へ延伸する案

 ただし、岩倉駅までの延伸には大きな課題もあります。

 桃花台線名鉄岩倉駅まで延伸する場合、途中の国道41号線上を走る名古屋高速11号小牧線が大きな障壁になることが予想されます。

 名古屋高速小牧線は、その途中で高架橋と立体交差することを想定していないため、桃花台線がくぐり抜けるには高架の高さが足りません。このため、名鉄岩倉駅まで桃花台線を延伸する場合は、名古屋高速小牧線の上部に架橋する、もしくは途中で地下に潜るなどの対応が必要となります。

高速化と駅位置の見直しによる所要時間の短縮

 桃花台線小牧駅から名鉄岩倉駅まで延伸した場合、桃花台線の総延長は約13.2㎞となり、営業区間は廃止前からおよそ2倍となります。このため、名古屋市中心部までの速達性を確保するため、桃花台線の高速化を図り、桃花台ニュータウンから名鉄岩倉駅までの所要時間を可能な限り短縮する必要があるかと思います。

 当時の時刻表などによると、小牧駅桃花台東駅間の所要時間は15分で、運行速度は最高で55㎞/hでした。当時と同じ運行システムで桃花台線を復活させた場合、営業区間の総延長から推察するに、桃花台東駅から岩倉駅までの所要時間はおよそ30分程度となることが見込まれます。

 そこで、復活後の桃花台線では、路線の高速化を図るため、高速走行に優れた常電導吸引型(HSST)を採用し、磁気浮上式鉄道(リニアモーターカー)として運行を再開することとします。

 国内でHSSTを採用している路線には、2005年の愛知万博にあわせて開業した東部丘陵線リニモ)があります。同線の最高速度は中量軌道輸送システムとしては異例の100㎞/hであり、桃花台線よりも長い藤が丘駅八草駅間の約8.9㎞を17分で結んでいます。

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東部丘陵線リニモ)(Wikipediaより引用)

 復活後の桃花台線は、リニモと同様のシステムにより運行を行うことで最高速度を100㎞/hへと引き上げ、桃花台ニュータウンから岩倉駅までの所要時間を短縮することとします。

 同時に、小牧駅から桃花台東駅までの既存区間においても、駅数の見直しによる速達性向上を図ります。

 桃花台線には、起点・終点である小牧駅桃花台東駅のほか、途中駅として5つの駅が存在してました。この5つの途中駅については、さらなる高速化を図るため削減するとともに、沿線の状況を踏まえた駅位置の見直しを行い、より利便性の高い交通機関を目指します。

 具体的には、小牧原駅、東田中駅、上末駅の3駅は廃止するとともに、東田中駅ー上末駅間と上末駅ー桃花台西駅間の2カ所に、新たに新駅(三菱重工名誘駅、市民球場北駅)を設けることとします。

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廃止駅と駅位置見直し後の新駅

 この見直しにより途中駅が1駅減るため、その分の所要時間が短縮できます。また、ピーチバスの運行開始とともに新たに設けられた三菱重工名誘と市民球場北の両バス停は、通勤やイベント時の利用が想定できるため、東田中駅と上末駅に代わる駅として、新たに設置するものとします。

 また、岩倉駅小牧駅間に設ける途中駅は、小牧市内に2カ所、岩倉市内に1カ所を想定しています。

その他

 さて、ここまで諸々と述べてきた復活案をまとめて、下のGoogleマップに落とし込んでみました。

 このほか、桃花台線の復活に伴い、桃花台線廃止後の代替交通機関として運行されてきたピーチバスは廃止とします。

 一方で、名鉄バス桃花台・春日井線とあおい交通の桃花台バスについては、春日井市方面への流動も少なからずあると思われることから、本数を減らした上で運行を継続するものとします。

 なお、桃花台ニュータウンの交通網は、桃花台線の廃止でバスの運行路線と本数が増え、逆に利便性が向上したという声もあります。このため、桃花台線を復活させた場合でも、桃花台線の駅を中心に、桃花台ニュータウンやその近隣地区を循環する高頻度のコミュニティバスを新たに運行させる必要があるかもしれません。

 

 桃花台センター駅に直結する商業施設ピアーレと隣接するピエスタについては、建物の老朽化が進んでいることやテナントの空床が目立つことから、駅の再開業にあわせてピアーレ側に新しい商業機能を、ピエスタ側には桃花台線をはじめとした公共交通機関を利用する人向けのパーク&ライド駐車場を整備することとします。

 ピアーレに代わって整備する新たな商業施設には、桃花台センター駅から少し離れた東部市民センター内にある篠岡支所の機能を新施設に移転させるほか、駅と新施設に直結したバスターミナルも併設することで、桃花台センター地区の利便性向上を図ります。

3 まとめ「桃花台線に思うこと」

 桃花台線の存廃問題が浮上した当時は、利用者数の少なさや名鉄小牧線の利便性の問題などから、廃止はやむを得ないという意見が多くを占めていたように思います。

 目立った存続運動などもなく、桃花台線の廃止に関して大きな話題となったことと言えば、桃花台線の建設費が住宅の購入価格に上乗せされていたということだけで、存廃自体に対して激しい議論が巻き起こったということもほとんどありませんでした。

 桃花台ニュータウンの住民にとって桃花台線の廃止は、何ら自分の生活に直結する問題ではなかったということでしょう。

 あれから12年あまりが経過し、桃花台ニュータウンが置かれている状況も徐々に変化しつつあります。

 12年前、当時はあまり想像できなかった人手不足の問題が、じわじわとこの国全体を脅かしています。桃花台ニュータウンを支えるバス交通も、業界は慢性的な運転士不足に陥っており、路線の増強はおろか、今ある路線の維持すらままならない地域も出始めています。

 一方で、近年は買い物や通院といった日常生活の移動に苦労する交通弱者の存在が社会問題として認識され、生活に密着した公共交通網の要請が高まっています。交通事故に対する心配などから車の運転に不安を抱える高齢者が増える中で、車を運転しなくても日常生活の移動に困らない公共交通網のあり方として、きめ細やかに地域を循環するコミュニティバスなどの重要性が増しています。

 このような状況に対し、筆者は、以前掲載した記事でも述べたとおり、基幹軸を担っているバス路線を自動運転で運行できる中量軌道輸送システムに置き換え、それによって浮いた人的資源で、地域をきめ細やかにケアするコミュニティ路線を拡充していくことに可能性を見出しています。

citypeach.hatenablog.com

 今思えば、桃花台線の廃止はその意味でとても惜しいものであったように思います。

 桃花台線の廃止に伴い、代替交通手段であるピーチバスに加え、名鉄バス桃花台・春日井線や桃花台バス、名鉄バスの都市間高速路線が相次いで開設されました。

 当時は多くのバス路線が開設され、桃花台ニュータウンは逆に便利になったと感じましたが、その後徐々にバス業界を取り巻く環境が厳しさを増し、桃花台ニュータウンでも桃花台バスや都市間高速バスでは開設時に比べると運行本数が減っています。

 今後、桃花台ニュータウン内に乗り入れるバス路線が今の運行頻度をいつまで維持し続けられるかは不透明です。いつかは本数が減り、路線が廃止となってしまうかもしれません。その前に、運賃が値上がりすることも大いに考えられます。

 そういったことを考えたとき、地域にバス以外の公共交通機関があることは大変意義あることだったかもしれないと、最近になって思うようになりました。

 

 いずれにしても、桃花台線は2006年に廃止となり、そして今後復活することはありません。

 今回の記事はあくまでもメモリアル的な意味合いを込めたものですが、いまだに撤去されずに残されている桃花台線のインフラ構造物を見ると、なんとか廃止にならずに存続できなかったものかと残念な気持ちになります。