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桃花台とその周辺の「まちづくり」について考える

小牧市「TSUTAYA図書館」 パブリックコメント開始へ

小牧市では現在、手狭となり老朽化も進んでいる市立図書館を移転し、小牧駅西側に新たな図書館を建設する計画を進めています。

 

新図書館の建設|小牧市

 

この新図書館の設計について市民から広く意見を募るためのパブリックコメントが、8月17日から開始されます。

このパブリックコメントに合わせ、当ブログでも新図書館計画に関して、簡単に気になるポイントや注意点について書いていきたいと思います。

個人的な意見となってはしまいますが、この記事が少しでも新図書館について考えるきっかけになれば幸いです。

 

 

小牧市の新図書館計画を巡っては、平成26年8月、市が新図書館の設計や建設、運営にあたってアドバイスを求める事業者を選ぶため実施された新図書館建設アドバイザリー業務委託プロポーザル(連携民間事業者選定)で、「TSUTAYA」を運営するCCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社)を含む事業体を選定したことで一気に話題となりました。

CCCと言えば、佐賀県武雄市武雄市図書館を「TSUTAYA図書館」としてリニューアルさせたことでも有名ですが、こういった話題性もあってか、新聞報道などでは「小牧にツタヤ図書館」などの見出しが付けられ、これに驚いた市民も多かったのではないでしょうか。

この新図書館の建設予定地は、小牧駅とラピオに挟まれた、現在は駐車場となっている地区(地図中の青枠)とされています。

 

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このような市街地の一等地への建設ということもあり、この新図書館計画は、まさに小牧市中心街活性化の起爆剤としても位置付けられているわけです。

新図書館の気になるポイントについて書く前に、まずはこの新図書館の計画について少し詳しくご紹介することとします。

 

新図書館とは       

小牧市の新図書館は、現在の市立図書館が手狭となり、かつ老朽化も進んでいることから、これらの課題を解消することを主目的として計画されているものです。

まず気になるのは新図書館の概要ですね。

新図書館の計画については、今後具体的な部分が詰められていくわけですが、アドバイザリー業務を行う事業者として選定されるにあたり、CCC・TRCの共同事業体は以下のような提案を行い、これが評価されたものとされています。

 

(1)利便性の向上、利用者の増加につながる提案

・図書館は年中無休の365日開館とし、開館時間も午前9時~午後9時(または10時)とする。

・ラピオにはえほん図書館が開設されていることを踏まえ、新図書館の児童スペースは児童書を中心とした選書を実施。

 

(2)時代のニーズに合った図書館にふさわしい新たな付加価値の提案

・市民のコミュニケーションの場として、「BOOK&CAFE」を自主事業として導入し、賑わいのある「場の提供」を実現する。

・利用者の自己実現欲求を刺激する「ライフスタイル分類」の導入や、書架配列・照明演出を効果的に利用した空間演出。

・ラーニングコモンズの概念を内装設計のコンセプトに導入した学習スペースの確保。

 

(3)小牧駅周辺のにぎわい創出につながる提案

・小牧駅前から図書館までの利便性のある動線や視認性の確保。

・ラピオと図書館利用者の相互送客を促すハード面・ソフト面の企画

 

(4)「ヒューマンスケール」をベースとした内装空間演出

・人が「居心地が良い」と感じる感覚的な空間認識を重視し、ただ書架を並べる、照明を設置するだけでなく、利用者が「居心地が良い」「気持ちが良い」と感じ、心から落ち着きや癒やしを感じる空間づくり。

 

小牧市立図書館建設アドバイザリー業務委託プロポーザル(連携民間事業者選定)

審査結果及び講評

 

以上が、現段階で分かっている新図書館の大まかな概要となります。

これはあくまでも、新図書館建設にあたりアドバイザリー業務を行う事業者を選定する際に事業者側が「我々はこのような図書館を提案します!」と言ったものなので、この提案がそのまま図書館の計画に直結するというものではありません。

ただ、こういった提案をした事業者が新図書館を建設する際に市にアドバイスを行うわけですから、当然基本的な新図書館のプランはこの提案に沿うものとなります。

まだこれだけでは具体的な図書館の姿はいまいち見えてきませんが、事業者がCCCであることや、カフェの併設などを提案していることを踏まえると、かなりの部分が武雄市図書館と似てくるのではないかなというのが個人的な印象です。

 

www.epochal.city.takeo.lg.jp

 

 CCC・TRCの共同事業体が行った提案に沿って新図書館が建設されれば、利用時間やカフェの併設といった点で図書館のサービスは現状よりも大幅に向上することが見込まれます。

また、駅前の好立地に図書館が移設されることに加え、図書館としての空間自体に魅力を持たせる工夫がなされることで、市民と図書館との距離が近くなる効果も期待されますね。

 

中心市街地の活性化      

新図書館には、もう一つの役目があります。それは中心市街地の活性化です。

むしろこの役目こそが、市が新図書館に課した本当の使命であるようにも思いますが。

 

中心市街地の活性化は市にとって重要課題の一つです。

ラピオからイトーヨーカ堂が撤退した2006年以降、中心市街地の活性化については、この新図書館計画も巻き込みながら、様々な議論がなされ、紆余曲折もありました。

小牧市でも、大型の総合スーパーや大手チェーンの食品スーパーなどが相次いで出店し、規模の小さな市街地の個人商店が厳しい状況に立たされるという典型的な市街地衰退が見られます。

これは単に、「中心市街地の賑わいがなくなってしまうのが寂しい」という気分的な問題ではなく、税収の減少などを通じて経済的・財政的に悪影響を及ぼしかねない市政の大きな問題です。

(中心市街地活性化の意義については、また別の機会で書ければと思っています。)

 

さて、新図書館建設予定地は、前述のとおり、小牧駅とラピオに挟まれた現在は駐車場となっている地区です。

新聞などではCCC・TRC共同事業体の選出に際し、新図書館建設と中心市街地活性化とを関連付けた記事が多く見られました。実際、市中心街の駅前に話題の「TSUTAYA図書館」なるものがオープンするとなれば、この図書館を目当てに市内外から多くの人が訪れるのは確実でしょう。

この新図書館計画はおそらく、「話題性のある新図書館で中心市街地に人を呼び込み、この集客を中心市街地の活性化に活かしたい」という市の算段が隠されているもので、実際は移転による図書館のサービス向上という目的以上に、中心市街地活性化の起爆剤としての位置付けの方が大きいのではないかと思われます。

 

新図書館計画についての気になるポイント・注意点    

さて、長くなってしまいましたが、以上が新図書館計画の紹介です。

以上を踏まえて、今後建設に向けて計画が具体化していく新図書館計画について気になるポイントや注意点を簡単に挙げていきたいと思います。

 

1. 駐車場の確保と公共交通機関の利用促進

新図書館建設予定地には現在、市営の平面駐車場(小牧駅西駐車場)が設置されています。

 

市営駐車場のご案内|小牧市

 

ここに新図書館を建設することになれば当然代替駐車場の確保が必要となるわけですが、中心市街地に新たな市営駐車場として利用する用地はないと思われます。

おそらく駐車場については、新図書館の地下に立体駐車場を建設することになるかと思われますが、現状の市営駐車場以上の規模の地下駐車場(例えば、地下2階にわたって駐車場を整備)を用意することなどは建設コストの制約などからも厳しいでしょう。

また、新図書館が開設されれば当然駐車場の利用も増加することが見込まれますので、不足する分の駐車場の確保についてどう対応していくのかといった点は、計画を見る際の重要な注意点であると考えています。

加えて、自家用車での図書館利用を抑制し、新図書館の建設をバスなどの公共交通機関の利用促進につなげる取り組みが併せてなされることも、個人的には期待したいところです。

 

2. 中心市街地への波及効果

今回パブリックコメントが行われる新図書館の設計と中心市街地への波及効果は直接関係ありませんが、新図書館の立地や話題性を考慮すると、基本設計の段階から中心市街地への波及効果を念頭に置いた設計があっても良いのかもしれません。

例えば、武雄市図書館や東京・代官山の「蔦屋書店」では、館内(店内)の雰囲気そのものが大きな魅力となり、多くの人が訪れる場所となりました。

もちろん図書館は市民サービスを提供する場所ですので、その役割を放棄してまで雰囲気を意識した空間を創出する必要はありませんが、図書館としての機能を果たせる範囲で、魅力的な雰囲気を意識した設計にこだわって欲しいと個人的には思っております。

また、小牧市のシンボルである小牧山小牧城を施設のデザインに取り入れたり、小牧市についての情報や中心市街地の魅力を紹介するコーナーなどを設け、市外から訪れた人に小牧市をアピールすることも検討して欲しいですね。

 

3. 本当に「市民のための図書館」と言えるか

さて、図書館というのは、そもそも市民の交流・学習の拠点です。その本質は市民サービスなのであって、いくら中心市街地活性化が市の重要課題であったとしても、図書館が単なる市街地活性化の「客寄せパンダ」として建設されてはいけません。

 

実際、武雄市図書館では、民間事業者が図書館の運営に携わるメリットとデメリットが双方で顕在化し、デメリットの方はブームの裏で大きな問題となりました。

Tポイントの付与や個人情報の取扱い、図書館サービスと「付属事業」の関係性など、行政が提供する住民サービスとしては相応しくない点が指摘され、計画の詰めの甘さが批判されることもあったようです。

 

▼ブログですが、武雄市図書館についての問題が詳しくまとめられています

goldenhige.cocolog-nifty.com

小牧市の場合新たな図書館を建設するため、武雄市図書館の問題点がそのまま当てはまるわけではありませんが、図書館改装への経緯については小牧市とも似たものがありそうです。

 

小牧市の新図書館でも、カフェが併設され、武雄市図書館のように蔦屋書店による本の販売やCD・DVDの貸出が行われる可能性はあります。

このようなサービスを行うにあたっては、武雄市図書館に対する批判をきちんと参考にし、行政の提供するサービスとして適切な形で行われるのかという点を厳しくチェックしていくことが大切です。

 

また、施設の目新しさや斬新さばかりを考えてしまい、図書館として市民にとって必要な機能が削ぎ落とされてしまわないかも大切な注意点です。

学生などが利用する自習室が不足していたり、空間にこだわりすぎて書籍を探しにくいといった具合になってしまってはいけません。

一方で、大学の図書館ではよく見られるディスカッションスペースや、講習会などを行う簡単なホールなどが併設されていれば、市民の学習・交流拠点としての機能をより充実させることができそうです。

 

▼ディスカッションスペースのイメージ(東京工業大学HPより)

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出典:図書館リニューアルオープン | 教育TOPICS | 教育 | 東京工業大学

 

新図書館はどのような図書館であるべきか。それは市民のニーズを的確に捉えた図書館であることがまず第一です。

そういった視点から図書館が設計されているか、新図書館が市民のために設計されたものであるかという点は、市民の目できちんとチェックされなければなりません。

 

最後に       

以上、新図書館の計画についてかなり長く書いてしまいましたが、基本設計に際して行われるパブリックコメントに関して述べたいことはだいたい以上です。

この他にも新図書館計画についてはいろいろと思うことがありますが、それはまた機会があれば。

 

図書館というのは、市民の学習や文化の継承を支え、市民同士の交流拠点ともなる市民にとっては重要な施設の一つです。

ですので、本来なら新図書館建設のアドバイザリー業務を行うのは我々市民であるべきなのではないかとも思ったりもしますが、現実問題としてパブリックコメント以外に新図書館計画に関して市民が参画できる機会はほとんどありません。

また、CCCによる公立図書館運営への参加はその賛否や評価が大きく分かれているものですし、その上小牧市の場合は過去の中心市街地の問題とも合わさって、この新図書館計画自体への反対論も根強いものであるというのが個人的な理解です。

このような計画が市民による深まった議論もなく、民間事業者と市の担当者で粛々と進められている状況には、少しばかり懸念を感じます。

 

新図書館の設計についてのパブリックコメントは、広報こまきの8月15日号にも紹介がありました。

もし新図書館計画について少しでも興味があれば、小さな疑問点や自分の要望でも構いませんので、メールで気軽にパブコメパブリックコメント)してみてください。

パブリックコメントにどれほどの力があるかはわかりませんが、市としても市民の関心が高い事業に市民を参画させずに進めるということはしないでしょう。

 

図書館は公共事業ですし、一度作ってしまったら簡単には変えられません。

将来にわたって市民に必要とされる図書館が作られることを期待したいです。