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外国人観光客を呼び込め! 「観光都市・ナゴヤ」を目指すために必要なこと

 日本を訪れる外国人観光客は2012年には約836万人でしたが、ここ数年で飛躍的に増え、2017年にはおよそ3倍の約2,870万人まで増加しました。さらに、6月時点の推計によると、2018年の訪日外国人観光客はすでに2,700万人を超えているとみられ、昨年を上回るペースで外国人観光客が日本を訪れています。

 そして近年では、訪日外国人観光客の行き先も多様化していると言われています。

 これまで日本を周遊する観光ルートは、東京から入国し、京都・大阪などを観光した後に関西国際空港から出国するといういわゆる「ゴールデンルート」が代表的でした。しかし最近は、ゴールデンルート以外の観光地にも多くの外国人観光客が訪れるようになっています。

 普段、自分が暮らす街・名古屋でも、栄や名古屋城などの観光地を中心に、アジアからの訪日客をはじめとした外国人観光客が目立つようになってきました。

 今後は東海地方でも訪日外国人観光客の増加が見込まれ、中部圏社会経済研究所の推計によれば、愛知県、岐阜県三重県の3県を訪れる外国人観光客は2020年に200万人を超え、2017年に比べて57%増加すると予想されています。

 

 名古屋という都市は東京と大阪の中間点に位置し、これといった観光名所もないことから外国人観光客にとっては通過点でしかなく、全国的な知名度や多くの観光客を引き付ける魅力に乏しい都市でした。

 しかし最近は、トリップアドバイザーなどの口コミサイトやInstagramをはじめとした画像投稿SNSによる拡散の効果もあり、ゴールデンルートに埋没していた名古屋の魅力が徐々に発信され、多くの外国人観光客が名古屋を訪れるようになっています。

 ちなみに、名古屋を訪れる外国人観光客にとっての最近のトレンドは「オアシス21」だそうです。夜間のライトアップがフォトジェニックだとの評判がトリップアドバイザーなどで広まり、写真撮影を目的にわざわざ名古屋に立ち寄る人もいるのだとか。

 地元民にとってはありふれた施設も、外国人観光客にとってみれば魅力ある観光名所になり得るということがよくわかる現象であると感じます。

 

日本一つまらない街なんの…オアシス、訪日客集う新名所:朝日新聞デジタル

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オアシス21のライトアップ

 また、近年は日本を周遊する新しい観光ルートとして「昇龍道」の人気も高まっています。「昇龍道」で提案される観光ルートは愛知県、岐阜県三重県、長野県、石川県、富山県福井県を周遊するものとなっていますが、その中で名古屋は、この地方への玄関口、あるいは宿泊の拠点として位置付けられています。

 このため、今後も日本全体で訪日外国人観光客の増加が見込まれる中で、さらなる外国人観光客の来訪が期待されています。

shoryudo.go-centraljapan.jp

 

 一方で、名古屋には多くの訪日外国人観光客を受け入れるために克服すべき弱点も見受けられます。

 例えば、宿泊機能の強化

 特に名古屋は、東京や大阪に比べ、インターナショナルブランドによる高級ホテルが少なく、消費額の大きい富裕層の取り込みが図れていないとされています。

 リーズナブルな価格帯で宿泊できるビジネスホテルは市内に続々と開業しているものの、いわゆる高級ホテルと称される海外のブランド系ホテルはヒルトン名古屋名古屋マリオットアソシアホテルのみとなっており、今後は高級ホテルの誘致による富裕層の取り込みを目指す必要があります。

 また、訪日外国人観光客にとって分かりやすい公共交通機関のあり方についても考える必要があります。

 例えば、中部国際空港から入国した訪日客や東海道新幹線でこの地方へやってくる観光客のほとんどは名古屋駅を経由することになりますが、名古屋駅の構造はきわめて複雑で、日本人でも初めて名古屋駅を利用するときは道に迷うことがあるという話を耳にします。

 駅の構造が複雑なのは東京や大阪でも同様ですが、名古屋駅の場合は特に、JR東海名鉄近鉄、市営地下鉄、あおなみ線といった複数の交通事業者が1つの駅に乗り入れているため、案内表示などがバラバラになり、分かりにくさに拍車をかけているように感じます。

 名古屋駅では、名古屋市が旗振り役となって2027年のリニア中央新幹線開業までに大規模な改修を行い、乗換時の利便性と分かりやすさを向上させるとしています。これにあわせて、増加する訪日外国人観光客を意識し、駅全体や駅周辺で統一された多言語表記による案内表示を増やすなど、日本人以外の人にも分かりやすい駅の方向性について検討してもらいたいと思います。

 名古屋駅について言えばこのほかにも、トイレの使いやすさを高めること、JR名古屋駅においては駅ナカ改札内)の商業施設を充実させること、名鉄名古屋駅においては中部国際空港を利用する外国人にも分かりやすい駅施設とすることなど、さまざまな取り組みが必要であるように感じます。

 また、訪日外国人観光客を意識した駅施設の改修は名古屋駅だけでなく、栄駅、金山駅といった市内の他のターミナル駅のほか、地下鉄市役所駅をはじめとした観光地に近い駅でも同様に必要だと感じます。加えて、これは主として交通事業者による取り組みになってしまいますが、電車内での多言語表記や多言語による音声アナウンスなどを充実させ、公共交通機関で足を伸ばす外国人観光客が利用しやすい環境を整備していくことが重要です。

 このほか、夜の名古屋を満喫できる工夫も必要であると思います。

 個人的に、名古屋の夜は早いと感じます。例えば、名古屋城名古屋港水族館といった名古屋を代表する観光スポットの営業終了時間は早く、名古屋城は午後4時30分に閉門、名古屋港水族館は通常期間で午後5時30分に閉館してしまいます。

 これだけ早くに施設が閉館してしまうと、限られた時間の中で多くの体験を望む訪日外国人観光客にとっては物足りないと感じてしまうのではないでしょうか。観光の満足度を高め、夜の名古屋を満喫してもらうという意味では、観光スポットとなる施設はもう少し営業時間を延長し、夜の観光の充実につながる工夫がほしいところです。

 ちなみに、近年は「ナイトタイムエコノミー」という新しいワードが注目されています。

 日本では外国人観光客の総数は飛躍的に増えたものの、外国人観光客の消費金額が伸び悩んでいると言われています。そこで、増え続ける訪日外国人観光客による経済効果を最大限に引き出すため、近年注目されているのが「夜の観光=ナイトタイムエコノミー」というわけです。

 ただし、ナイトタイムエコノミーはその国で暮らす人々の生活様式や労働環境に大きく左右されるため、ただ単に夜遅くまで施設や店を開けるだとか、公共交通機関を終夜運行するだとか、先進的な取り組みを直ちに名古屋で実践できるかと言えばそれは難しいでしょう。

 そのため、まずはできるところから手を付けることとし、例えば、夕方には終了してしまう観光施設の営業時間を延長したり、観光施設の周辺に夜でも営業している飲食店を集積させたりといった地道な取り組みから始めていくことが大切です。

 名古屋の場合、港湾部に工場群が集積しており、夜は夜間照明による夜景が綺麗だと聞いています。そういった夜間の臨海工業地帯をクルーズ船で巡りながら、お酒などの飲食を提供したらおもしろいのではないかと思います。 

 

ナイトタイムエコノミーが日本を救う!? ~観光立国・新戦略~ - NHK クローズアップ現代+

 

 最後に、大型クルーズ船への対応の強化です。

 近年は、大型クルーズ船が日本に寄港する回数が増えており、それに伴って大型クルーズ船で日本を訪れる外国人観光客も増加しています。

 名古屋港では2017年に33回、大型クルーズ船の寄港がありましたが、最も多い博多港の326回、次いで多い長崎港の267回などに比べると、見劣りせざるを得ない回数となっています。

 大型クルーズ船は一度に多数の訪日客が訪れるだけでなく、乗船している旅客も富裕層が多いことから、その入港回数を増やすことの意義は大きいと思われます。

 なお、名古屋港では、港湾部の中央に架かる名港中央大橋名港トリトン)により、橋の完成以降に大型化した最新のクルーズ船が橋の下をくぐることができず、海外から寄港する大型クルーズ船は着岸施設を持つガーデンふ頭に寄港することができません。このため、そのような大型クルーズ船の寄港時は、名港中央大橋の南側にある金城ふ頭に仮設の施設を設け、臨時で受け入れの対応を行っています。

 一方、クルーズ船の寄港が多い他の港を見ると、博多港や長崎港、横浜港などは大型クルーズ船の旅客を受け入れる国際ターミナルを完備しており、旅客にとって快適な受け入れ態勢が整っています。特に、横浜港の「大さん橋国際客船ターミナル」は、ターミナルビル自体が1つの観光スポットとなっており、クルーズ船で横浜を訪れた外国人観光客以外の人にも魅力的な施設となっている点が特徴的です。

 名古屋港でも、2022年以降の完成を目標に金城ふ頭に新しい着岸場所を整備する計画が進められており、ぜひとも大型クルーズ船の寄港が増えるきっかけを生み出す施設となってほしいと思います。

 

名古屋・金城ふ頭に大型クルーズ船拠点 22年度以降に:朝日新聞デジタル

 

  今後も外国人観光客が増え続ける日本において、まだまだ名古屋は外国人観光客の受け入れに課題が多いのが現状です。

 国全体の動向としては、政府は今後も訪日外国人観光客の誘致に力を入れる方針で、2020年には4,000万人、2030年には6,000万人とする目標を掲げています。

 筆者個人としては、外国人観光客の増加が続けば続くほど、アジア圏からのリピーターが増え、東京や京都、大阪といった人気の都市以外の地方都市へ外国人観光客が分散していくものと予想しています。事実、最近では北陸新幹線の開業効果からか、欧米からの訪日客を中心に、金沢を訪れる外国人観光客が増えているそうです。

 名古屋は東京から関西にかけてのゴールデンルートの最中にありながら、目的地となることは少なく、単なる通過地点としての地位に甘んじてきました。しかし、今後は都市の魅力を高め、それを効果的に発信することで、名古屋にもこれまで以上の規模の訪日外国人観光客を呼び込むことができるようになるはずです。

 そうして名古屋を訪れた訪日外国人観光客が快適で不自由の少ない旅を楽しめるよう、やってくる外国人観光客を受け入れるための態勢をあらかじめ都市や地域全体で整えておく必要があります。

 訪日外国人観光客があれよあれよと増え、多くの外国人観光客が一気に押し寄せたことで様々な課題が日本各地で噴出しています。そういった先例を参考にしながら、多くの外国人観光客が快適な旅行を楽しめる都市を目指し、行政が旗振り役となって様々な取り組みが進められていくことを期待しています。